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双極性障害

躁(気分が高揚し、活動的な状態)とうつ(心が暗く沈み、元気のない状態)が交互に現れる、いわゆる「躁うつ病」(二相性躁うつ病)のことを、「双極性障害」と呼んでいます。そしてさらに、「T型」「U型」の二つに分けています。

「T型」・・・躁病と大うつ病がはっきりと認められるタイプ。
「U型」・・・大うつ病がはっきりと認められるが、躁病は軽いタイプ。

一般にうつ病よりも若い時に発症する事が多く、平均して30歳前後で男女差はありません。うつの症状の時には3分の2が自殺を考え、10%前後は自殺をしてしまいます。また、アルコール乱用やパニック障害を併発する事も多く、時には身体化障害、心身症を併発します。

反対に躁の時には、お喋りになりしきりに動き回ります。気分が高ぶって陽気になると同時に誇大的になり、自分の能力や財産などについて吹聴します。そうかと思うと、不機嫌になりやすく、喧嘩っ早くなるのです。

そして、躁状態がいきすぎると思考が支離滅裂になってきて、分裂病(総合失調症)と見分けにくくなってきます。躁状態は一見すると気分爽快なようですが、実際には行動化傾向が強く衝動性も高まり、不機嫌にもなるため、うつのときよりも自殺率が高くなります。

躁とうつの両方か、躁だけが見られる場合、躁うつ病(双極性障害)と診断されます。躁だけがあるものも躁病とはせず、躁うつ病に含めるというのは少し不思議に思うかも知れませんが、純粋に躁状態だけが続くというのはまずありません。つまり、今現在は躁病しか見られていないとしても、やはり「やがてはうつ病がくる」と想定出来るのです。

診断基準は、うつ病と躁病の診断基準に従います。
・うつ病(うつ病での記述の通り)

・躁病
  1. 以上に高揚した気分が1週間以上続く。大体は気分爽快だが、他方でイライラしやすく、怒りっぽくなる。
  2. 躁状態の時には、次のうち3つ以上が当てはまる。
    1. 自尊心の肥大。
    2. 睡眠欲求の現象。睡眠時間が2〜3時間でもよかったり、
    3. あるいは全く眠らなくてもいい。
    4. 普段よりもおしゃべりになる。
    5. 考えが次々に飛ぶように(「走るように」と表現する人もいる)わいてくる。
    6. 注意力が散漫になり、ちょっとした事で注意がそらされてしまう。
    7. いてもたってもいられないような焦りを感じ、やたらと活動的になる。(仕事や事業、性的関係など)
    8. 夜遊びに出かけたり、高い買い物をふんだんにしたりと、享楽的な活動に熱中する。
  3. 躁だけ、うつだけというように、どちらが一方だけが起こる。両方同時に起こることはない。
  4. このために日常生活や仕事、学業に支障があり、対人関係でもトラブルが多い。時には精神病のような幻覚・妄想がみられることもある。
  5. 薬物乱用や身体の病気によって生じているわけではない。


以下は、躁病の人に見られる特徴です。

躁的気分変調
病的に爽快となり、体力、気力が充実し、自信満々の態度で颯爽と活動します。身なりも派手となり、恐いもの知らずにどこにでも顔を出し、尊大、傲慢な態度をとります。

多弁・多動
活動性が亢進し、お喋りとなり、電話をかけまくったり、一日中あちらことらと活動します。躁的気分変調とあいまって、借金をして買いあさったり、無謀運転をしたり、性的逸脱もよくみられます。活動性が著しいときには、寝ないでも活動を続け、強い不眠となります。

観念奔逸
思考の回転がよくなり、いろいろな考えが湧き起こります。
しかしその時々の気分で考えがあちこちへ変化するので、思考内容にまとまりを欠き、全体としてはあまり役立たない発明を乱発したりします。

誇大妄想
自分を過大評価し、思考内容も誇大的となるため、だんだんと現実離れをした事を言い出すこともあります。

易刺激性
躁状態に基づいて、周囲と衝突すると、急に攻撃的となり不機嫌、いらいらが目立ってくることもよく見られます。

治療は薬物療法が中心となります。
まず使われるのは炭酸リチウムですが、最近では抗てんかん剤も効果があることがわかっていますので、炭酸リチウムで症状がよくならなければ抗てんかん剤を使ってみるべきでしょう。また、あまりにも躁がひどく、コントロールできないようであれば、抗精神病薬、例えばハロペリドールなどを使います。
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