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離人症

生き生きとした実感がえられない症状の事です。
自分の精神状態、特に喜怒哀楽に対して実感が感じられない場合、自分の身体に対して実感が感じられない場合、外界に対して実感が感じられない3つの場合があります。

「実感がないという感じを強く実感している状態」です。精神患者には不安、抑うつについで多い症状とされています。

症状
離人症状
意識の内容を分類してみると、外界への意識、身体の意識、人格の意識に分けられます。

離人体験とはこの3つの領域、外界、自己身体、自己精神に現実感が湧かなくなってしまう事です。外界に対する離人症を現実感喪失と云います。自己身体、自己精神に対する離人症状を一般に離人症と言います。

離人症は「自分が自分でない感じ」「映画のワンシーンの中にいるような感覚」「自分が見知らぬ人間であるように感じる」「自分がロボットのようだ」「外国にいるようだ」などと訴えます。
「自分が自分の精神や身体から抜け出して外部の観察者になったような自己の知覚、体験をしている」と言った様な感じです。

行動している自分と観察している自分が存在していると言った感覚でしょう。
この様な自己の分離現象は心の中での果てしない自問自答、堂々巡りとして体験されたり、自分の身体から自分が抜け出す体験(体外離脱体験)として感じられる事もあります。外観上は、感情表出に乏しく、淡々としています。まるでトランス状態にあるようなものです。

離人症は、宗教的な瞑想などのような非病的現象としても生じますが、この場合の離人症は心地よいものです。他の解離症状と同じく、心的外傷に深い関連がある為苦痛を感じ、日常生活機能が障害され、自傷行為や自殺企図に及ぶこともあります。

また、離人症は解離性障害に限らず、特に、うつ病、PTSD、心気症、薬物乱用、パニック障害、精神分裂病(現 統合失調症)などによく見られます。


現実感喪失
外界に対する離人症を現実感喪失と言います。「外界が今までと違い奇妙に感じ、非現実的に見える」事と定義されています。
具体的に言えば、自分の家を知らない場所の様に感じる、家族や友人がよそよそしく知らない人のように、ロボットのように見えるなどです。

視覚に関する変化が顕著で、ものが大きく見える(大視症)、小さく見える(小視症)、歪んで見える、遠くに見える、生々しく見える、かすんで見えるなど色々です。幻視に近い症状が出ることもあります。

フラッシュバックも現実感喪失に含まれます。フラッシュバックを体験しているときも、外界の認知や時間の感覚がゆがめられていることが多いからです。

多くの場合で、この二つの症状が併せ持って出てくるようです。「自分の意識や自分の身体が現実感を失う」ことと、「自分のまわりのものを奇妙な異物と感じている」が両方出てくるのです。

診断基準は以下の通りです。
  1. 自分から心や体が遊離して、外部から観察しているような感覚がずっと続いている。
  2. 離人体験の間、現時問題などは正常に処理できる。
  3. 離人体験によって苦痛を感じたり、社会、職業的に障害が生じている。
  4. 離人体験が、精神分裂病、パニック障害、急性ストレス障害、
  5. その他の解離性障害などの他の精神疾患の経過中にのみ起こるものではなく、薬物乱用などはないとき。

原因
よくわかっていません。
うつ病や精神分裂病の初期、PTSDの症状として起こることはあります。特別な理由はなく突然おそって来るものです。思春期から青年期にかけて発症しやすく、40歳以上になると滅多に見られません。男女比では女性の方が2倍ほど高いとなっています。

経過と治療
思春期を中心として15〜30歳の間に最も発症しやすく、一般に症状が長く続きます。たいていは20代〜30代のどこかで治癒します。

淡々と自分の症状について語るのが特徴的で、現実には大変苦しい症状が多いようです。そのため自殺をかかるケースも多く、自殺してしまうこともあります。大体は自然に治癒する事が多く、決して治らない病気ではありません。

うつ病や精神分裂病にあわせて出て来た場合などはその治療薬などを用いる事が多いようですが、実際は患者の様子を見ながら、抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬を組み合わせて治療していきます。心理療法では、「力動精神療法」や「認知行動療法」を用います。
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