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マニピュレーター

マニピュレーターを見分ける。
マニピュレーターとは、相手の心を支配したいと言う欲求が異常に強い人のことで、当たり前のように私たちの周囲に存在している。マニピュレーターとは常に人を心理的に支配しようとする人のことであって、まれにちょっとした心理的な駆け引きをするということとはまったく異なる。
マニピュレーターは一種の人格なのである。

マニピュレーターの特徴。
「マニピュレーター(裏で操る人)」という言葉を用いるのは、彼らが自分の暗く邪な面を決して人に見せないからである。またほかのすべての人間と同様に、彼らにも長所はある。それゆえ、マニピュレーターを迅速に、かつはっきりと見分けることは難しいのである。
下記にマニピュレーターを定義する30の特徴をあげていくことにする。次の特徴のうち10以上の特徴に当てはまる場合は、その人はマニピュレーターである可能性がある。それより少なかった場合には、その人はたまたまそう言う態度をとったというだけで、マニピュレーターであるとは考えられない。
  1. 家族の絆や友情、愛情、職業的良心などを盾に取って、ほかの人々に罪悪感を抱かせる。
  2. ほかの人々に、常に完璧でなくてはならず、決して意見を変えてはならないと思わせる。また、あらゆることを知っていなければならず、欲求や質問にはすぐに答えられなければならないと思わせる。
  3. 自分の欲求を満たすために、ほかの人々の道徳的な信条(礼儀正しさ、ヒューマニズム、連帯責任、半人種差別主義、善良、<母親のあるべき姿>など)を利用する。
  4. ほかの人々の性質、能力、人格を疑う。批判し、けなし、裁く。
  5. 嫉妬する。それも他人に対してだけでなく、自分の子供や配偶者に対しても嫉妬する。
  6. 私たちに気に入られようと、お世辞を言ったり、プレゼントをしたり、ちょっとした世話を焼いたりする。
  7. ほかの人の同情を引くために、犠牲者であるふりをする(病気を大げさに言う、周囲の状況の難しさを強調する、過労だと言うなど)。
  8. 自分の責任をほかの人々に押し付ける。
  9. 自分の欲求、感情、意見などをはっきりと伝えない。
  10. あいまいな答え方をすることが多い。
  11. 会話の途中で、主題をまったく違うものに変えてしまう。
  12. 対話や会合を避ける。
  13. 人や物を介してメッセージを伝える(直接云うかわりに電話で言う、メモを残しておくなど)。
  14. 自分の欲求を隠すために、一見論理的な理由を持ち出す。
  15. 人の言うことをゆがめて解釈する。
  16. 自分に対する批判を認めようとせず、明白な事実も否定する。
  17. 暗に、あるいはあからさまに脅す。
  18. 自分の影響力を強くするために不和の種をまき、疑いを生じさせ、人々を仲たがいさせようとする。
    カップルの仲を引き裂くことさえある。
  19. 相手や状況によって、意見、態度、感情などを変える。
  20. うそをつく。
  21. ほかの人々の無知に付け込んで、自分のことを優れていると思わせる。
  22. 自己中心的である。
  23. 云うことは論理的で筋がとおっているが、その態度や行動や生き方は、それとは正反対のものである。
  24. しばしば、ぎりぎりのときになってから、頼みごとをしたり、命令したり、ほかの人々に行動させたりする。
  25. ほかの人々の権利や欲求、要求を考慮しない。
  26. ほかの人々の要求に対して(口では関心があるように言っていても)無関心である。
  27. 周りの人々に不安や不自由さを感じさせる。
  28. ほかの人々に、自分の意思ではしないようなことをさせる。
  29. 自分の目的を達成する能力があるが、そのためにほかの人を犠牲にする。
  30. その場にいないときでも、絶えず人々の議論の的になる。

マニピュレーターは意識しているか?
この答えには幅を持たせる必要があるが、大部分のマニピュレーターは自分が他者に対して及ぼす支配力と影響力については意識しているが、その結果については意識していないと考えられる。
またマニピュレーターは、自分がいないところで、自分自身やその矛盾に満ちた行動についてどのように言われているかを想像することもできない。その悪意ある指摘やうそ、態度や意見の急激な変わりようは、マニピュレーターの頭の中では、その結果と結びついていないようである。

またマニピュレーターは自分のせいで誰かが眠れなくなったり、泣いたり、過度の不安を感じたり、病気になったりするとは夢にも思わない。マニピュレーターは自己中心的であるためほかの人の身になって、その人のことを理解するということができないのである。

自己愛的な倒錯者と性格倒錯者
マニピュレーター(自己愛的な倒錯者)と<性格倒錯者>の具体的な相違点を見ていこう。
まず性格倒錯者のほうが争いを引き起こしやすく、周囲の人々に受け入れられない。そしてほかの人々のことをあからさまに攻撃する。
一方、マニピュレーターは直接反感を買わないよう用心する。そして性格倒錯者より目立たないように行動し、まわりの人々の警戒心を呼び覚まさないようにする。

性格倒錯者は一徹である。
一方、マニピュレーターは待つことができるし、同情を引くために犠牲者であるふりをすることもできる。
 性格倒錯者は性格障害である。そのフラストレーションの反応は激しく、極端である。性格倒錯者は何事も即座に行わなければ気がすまず、人を批判する際にも決して躊躇しない。

さらに性格倒錯者は、他者の感情を手玉に取ることを隠そうとせず、被害者が屈服するさまを見ることに喜びを感じる。
そして被害者に屈服したのだと気づかせることによって、さらに得意になる。支配の喜びは倒錯の感情に特有のものである。

性格倒錯者は、平和は相互理解のかわりに、刺激を求める。
何かを作り出す変わりに、破壊する。
その思考は創造的ではなく、戦略的である。
本当の友人がいない。共犯者を捜し求める。
罪悪感や良心のとがめを感じない。
ためらわない。断言する。
過剰な自尊心の製で、他人との境界を尊重したり、他人を信頼したりすることができない。
残酷で卑俗な性的な言葉を用いることによって、不快感を与えて喜ぶ。

このように、性格倒錯者はあらゆる方法を用いて他者を精神的に支配しようとするが、その方法はマニピュレーターの場合より強烈で、被害者の目にも明らかである。

 倒錯性を持った患者と、妄想性の人格の患者を見分けることが難しい場合もある。しかし妄想性の人格の患者が、最終的には他者との関係を断つことになるのに対して、倒錯的なマニピュレーターは、どちらかと言えば不完全な自我の内部で、他者の自己愛を利用することによって、自分の自己愛を守ろうとする。
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