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解離性同一性障害−経過と治療 第一〜第三段階

第1段階
精神療法の基礎を築く安全な雰囲気を作り出す事です。
解離性同一性障害(多重人格)の診断がついたら、患者にその事を告知しなければいけません。ホスト人格がなかなか診断を受け入れなかったり、診断を受け入れない交代人格が居る事も多い様です。
治療はあくまでも患者自身の自発性によってなされるもので、患者もしくは治療者のどちらにも治療を中止する権利がある事を患者に理解して貰います。

その上で、治療の目標、治療の段階、催眠療法や集団療法などの併用、限界などを説明します。治療の主体は患者であり、患者が自己決定していく事が基本です。

第2段階:予備的介入
接近しやすい交代人格から接近していく事です。
治療の突然の中断、自傷、自殺などの患者が放棄したいと思っている行動について交代人格と協定を結ぶ事です。交代人格間でのコミュニケーションを育て、(治療に)賛同する交代人格を増やしながら、治療同盟を確立していく事です。

契約はホスト人格だけではなく、人格システム全体と交わす必要があります。
しかしこの段階で全ての交代人格と接触出来る事は稀です。この場合、トーキング・スルーと言う方法を用います。人格システム全体に呼びかけるのです。「全員聞いてください」などの前置きをしてから、伝えたい内容を簡潔に述べるのです。

こうする事は、治療を人格システム全体に対して行うと言う治療者の態度を患者に印象づける効果もあります。この段階で必要な事は患者がひとまず落ち着く事です。その為には交代人格間の内部のコミュニケーションを促進し、様々な選択を人格同士の話し合いによって決定していく事です。
コミュニケーションを促進する方法には、日記や掲示板などを書くと言う事があげられます。こうする事は、健忘のある時間帯の行動を後から理解するのにも役に立ちます。

第3段階:病歴収集とマッピング
交代人格、その起源、人格同士の関係についてより多くを学ぶ事です。この段階では交代人格の5W1H、つまり、交代人格の名前、出現した年齢と現在自分が感じる年齢、出現し存在し続ける理由、患者の生活史の中での関係と位置、特別な問題、機能、関心事などです。

一般的に、健忘の為患者名一貫した生活史を話す事が出来ません。通常、失われた生活史の部分は別の交代人格が保持しています。
交代人格間の内部コミュニケーションが活発になり、多くの交代人格と治療者との交流が進むにつれて、生活史の空白が埋められていきます。その中で、各人格の起源や役割などがより明らかになっていきます。

精神世界内での交代人格たちがどの様な関係で存在しているのかを図式化する事をマッピングと云います。
どの様に図式化するかは自由ですが、全交代人格がその中に描かれている事が大切です。マッピングは経過とともに変化していきます。治療が進むと、人格同士の共有部分が多くなっていきます。空白部分があれば、隠れている交代人格の存在を疑います。


基本的な説明
・診断基準の定義
・交代人格とは
・原因・虐待との関連
・主な症状
経過説明と治療方法
・経過と治療
・経過と治療 第一〜第三段階
・経過と治療 第四〜第六段階
・経過と治療 第七〜第九段階
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