一言で言ってしまえば「神経症と分裂病との境界」です。精神分裂病(現 統合失調症)と言ってしまうには症状が足りず、かといって神経症でもない状態です。
具体的にどんな状態かというと、非常に衝動的で、感情の起伏が激しく、そのため対人関係がいつも不安定な感じの状態です。感情をコントロールする力が弱いため、ときに暴力的だったり、自殺を図ったりします。
もう少し具体的に症状をまとめていきましょう。
- 見捨てられ不安
家族とくに母親から「見捨てられる」ことへの不安から、おおむねいい子に育つ。母親の期待に応えようとたくさんの努力をする。 - 不安定で激しい対人関係
対人関係の変化は大きいです。
ただ、自己愛性人格障害と比べると過剰な理想化は少ないです。表面的な対人関係と激しく退行した対人関係の間を揺れ動きます。意見の衝突を恐れて自分をごまかしたり、嘘をついたりします。 - 同一性障害
上の二つのために深刻な同一性障害を起こします。
本人にはその矛盾は分からず、他人にはよく見えます。本人はやりたいことをやっているのですが、周りの人は不自然に感じるのです。 - 衝動性
自己破壊的な行動としてあらわれます。
見捨てられ不安や感情障害と関連して起こります。無気力や寂しさを紛らわすために飲酒、無謀な運転、過食などがみられることもあります。 - 自殺の脅し、そぶり、行動、自傷行為がみられることが多いです。
- 感情が変わりやすく、慢性的にむなしさを感じています。
また、抑うつと怒りが混在しています。
ゆううつで不快な気分と同時に、何をやっても満足しない感じがするのです。 - 重篤な解離症状
幼少期の虐待と関連しているといわれます。
次に、人格の発達がどの様に人格障害に関わっていくか見てみましょう。
2,3歳の頃次第に子供は母親から離れ、社会に馴染んでいかなければなりません。つまり、今までの母と子供の二人だけの世界から、幼稚園や保育園に通い出すということです。これは、子供と母親の分離の始まりを意味するのです。
しかし、母親が必要以上に不安がったり、過保護になることで子供を引き留めることがあります。そうすると、子供はそっちのほうが楽なので、自立をやめてしまいます。
そうやって大人になっていくと「自立をするのが怖く」なってしまうのです。それが後に、見捨てられ感と繋がっていくのです。
また、家庭環境では両親の不仲、離婚、祖父母の教育への干渉があげられます。そういうことが、いっそう母子間の結合を強く結びつける結果になるからです。
幼児期の心的外傷も見逃せません。
境界性人格障害の女性の約半数に近親姦の経験があるという報告もあります。その他に虐待や何らかのPTSDとの関連が報告されています。
このことは、境界性人格障害が解離症状を示しやすいことにも繋がってきます。
さらに、境界性人格障害の中にはPTSDの特有の症状である、フラッシュバックやリストカット、解離症状などがよく見られます。
小学校に上がることになると発達の中心が家庭からさらに集団へと変わっていきます。ここでは、社会性を身につける時期に入るのです。
しかし、後に境界性人格障害になった人たちをよく見てみると、この時期には深い友達関係が築けなかったり、注意力が低かったり、成績が悪かったり、喘息、心身症、不登校、アレルギー性疾患があったりすることが多いようです。
そして、思春期に入ると色々な問題が出てきます。色々な神経症状が出たり不登校であったりします。云い変えれば、自我の脆弱性が表立ってきます。
このため、集団からの孤立傾向をさらに強める結果になります。
では、診断基準を見てみましょう。
次の9つのうち5つ以上があてはまると境界性人格障害が疑われます。
- 見捨てられる不安が強いために愛情をつなぎとめるために必死に努力をする。
- 他人への評価が理想化したり、こき下ろしたりといった両極端で不安定なものである。
- 同一性が混乱していて、自己像がはっきりしない。
- 衝動的で、ケンカ、過食、リストカット、衝動買い、アルコール、薬物、衝動的な性行為などが見られる。
- 自殺行為、自傷行為などをやろうとしたり、脅したりする。
- 感情が不安定。
- いつも虚無感を覚える。
- 場に合わない激しい怒りをもち、コントロールできない。
そのため、暴力に走ったりする。 - ストレスがあると妄想的な考えや解離症状が出ることがある。