物語的な詩

海へ行こう

そのチューブだらけの腕はただ白く
君と言う存在がいともたやすく居なくなってしまう事を
僕の心に刻み込んだ

海へ行こう 二人で
電車を乗り継いで
海へ 海へ

波が君をさらってしまうと言うのなら
僕も一緒に行くから

細い腕からチューブを外し
僕は君を連れ去った

初めて見る冬の海は
余りにも非情に感じたけれど
綺麗ねと笑う君を見て
それで良いのだと思った

海へ行こう 君をさらって

最後の季節を刻み込もう
寒さに心がかじかんでも
寄り添っていれば君を感じられるから

願わくば
君も僕と同じ気持ちであるように

海へ 海へ

身体が冷たくなっていく
呼吸が深く長くなっていく

最後を見届けるから
君を殺すのは僕だから
僕も必ず行くから

待っていて
冷たい季節を覚えていて

もう動かない身体を抱きしめた
inserted by FC2 system